あづま幼稚園

築約40年の幼稚園建て替えプロジェクトです。
「五感が働く園舎(見たい・聴きたい・触りたい・味わいたい・嗅ぎたい)」にしたいという園長先生、副園長先生の思いを形にしました。
子ども目線で寄り添い、第二の家でもあり、温かみのある懐かしさをテーマに、園庭や木々や空などの外部環境も、建築の一部としてとらえた自然と一体感のある光溢れる幼稚園です。
「つかう楽しみを子どもたちに感じてほしい」という考えから「余白」を大切にした空間デザインとし、子どもたちがその「余白」を埋めていくことで、彩りをまとい完成形となるような計画としています。

空間の構成

地域との調和と開かれた幼稚園を目指し、切妻屋根が連なる建物を、曲線を描く繋がれた屋根のある「そとの廊下」が一体感を演出しています。
屋根のある「そとの廊下」は、園庭と園舎、保育ゾーン・事務・管理ゾーン・遊戯室をつなぐだけでなく、子どもたちがワクワクする仕掛けのひとつでもあります。「園庭」→「そとの廊下」→「多目的な通路」→「保育室」が有機的につながり、それぞれの活動がお互いのスペースにはみ出しながら、多様な用途に対応した構成としています。

子どもたちが自由に行き来する多目的通路の交点に、天井の高い「絵本コーナー」を配置。上部にハイサイドライトを設け、自然の光と風を感じる中で、落ち着いて本を読める場を設定しています。

遊戯室は木造でありながら、天井には約13mの登り梁をかけ、木壁と窓の抜けが作り出す空間は、建物にいながらも空と外とのつながりを感じることができます。また、正門からの来園者や、保育室、園庭、遊戯室が見渡せる位置に職員室を配置し、子どもたちの安全と先生が働きやすい環境づくりも試みています。0歳~5歳までの子どもが使用するため、行動範囲や行動時間も違う園児たちが同じ園舎で過ごせるよう、保育室の配置だけでなく、普段の先生の動線や、給食の配膳時の動線など細やかな部分にも配慮しました。

配置計画と工事手順

計画当初より、建て替えによる子どもたちの負担をなるべく軽減できるよう既存の園舎を利用しながらの建築計画を進めました。
新園舎の建設→夏休み期間中の引っ越し→旧園舎の解体、そして秋には園庭での運動会が開催できるよう、グラウンド整備。子どもたちの園生活やスケジュールでストレスがより少ない建築計画を心掛けました。

多様な活動

差し込む光、吹き抜ける風、木の香りだけでなく、時間や四季の移ろいを映し出す空や雲、長年この園を見守ってきた落葉樹であるシンボルツリーの葉や影など自然を感じながら、たくさんの発見ができる空間です。ここでの活動を通して、子どもと建築の距離が近いものとなってくれたらと願います。子どもたちが多様な体験を通し、四季を体感しながら、「笑顔がこだま」するように遊び周り、学びに集中できる「芽生えの場所」を創るプロジェクトとなりました。

延床面積:1,575.24㎡
規模・構造:平屋 木造一部鉄骨造